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後継ぎ遺贈に効力はない?数代先まで相続人を指定する場合の方法

自分が死去した後の財産の受取人を指定する方法としては「遺言(いごん、ゆいごん)」による方法が一般的です。しかし、遺言を書けばすべてを実現できるわけではありません。

例えば「自分が亡くなった後の受遺者をAさんとする。その後Aさんが亡くなった後は息子のBさんではなくCさんを受遺者とする」といった「後継遺贈」は一般的に無効とされています。

今回は、「後継遺贈の有効性」と「後継遺贈を有効に行うための方法」を紹介します。

後継遺贈とは

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遺贈者が死亡して遺言の効力が発生すると、承継財産は受遺者に渡ります。その後に受遺者が死亡した場合、次の受遺者まで遺言者が選定することを「後継遺贈」といいます。

受遺者が死亡した後の遺贈先を指定すること

具体的には、遺贈者が以下のような文章で遺言を作成することが後継遺贈にあたります。

「私(遺贈者)が持つ〇不動産は、私が死亡後に相続人Aのものになる。その後Aが死亡した場合、Aの相続人Bでなく、Cに渡るものとする」

通常の相続であれば、死亡した人の財産は配偶者や子供などの「法定相続人」が受け取ることが民法で定められています。後継遺贈の場合、民法とは異なるルールを設けてしまうことになります。

後継遺贈の有効性

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民法とは異なるルールを設定したうえ、それによって受益者に財産を引き継がせる「後継遺贈」は、有効性に疑問がある方法です。

学説と判例で見解が異なり、有効性について明確な結論が出ていません。

効力がないとする意見が多い

学説によれば、一般的に後継遺贈は無効です。それは後継遺贈が「民法とは違うルールを設けているから」です。

民法第206条に「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」とあるように、一次受遺者は所有者として処分権を有するものとされています。後継遺贈は一次受遺者の処分権を認めていないため、無効とする説が有力です。

法律と違う解釈の所有権を、当事者間の合意で生み出すことはできません。法律上の疑問点を含む点からも後継遺贈が有効とは言えず、単なる希望であるという見解が一般的です。

裁判所の判例

一方、最高裁判所の判例は学説と見解が異なります。

昭和58年の判例によれば「本件遺言書による甲に対する遺贈につき(中略)丙に対して移転するべき債務を甲に負担させた負担付遺贈(中略)と解する余地もある」とされています。

つまり「解釈の問題である」とされ、「後継遺贈は効力なし」という原判決を破棄しています。

学説的な意見と判例は一致していないものの、判例も後継遺贈を明確に「有効」としていません。疑問符が残る以上、後継遺贈を積極的に行うべきではないでしょう。

数代先まで相続人を指定したい場合の方法

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紹介したように、通常の相続や遺贈では「受遺者の次の受遺者」を決めることはできません。

ただし、以下のような方法で「後継遺贈と同等の効果」を得ることは可能です。

  • 相続人に「次の相続人」を遺言で記してもらう
  • 「後継遺贈型の受益者連続信託」を利用する

相続人に「次の相続人」を遺言で残してもらう

あらかじめ、一次受遺者Aに対して「あなたの息子のBさんではなく、Cに遺贈する内容で遺言を書いてほしい」とお願いしておく方法です。

この方法であれば「後継遺贈」には当たらないため、最終的にCさんに財産が渡ることになります。

ただし、AさんとCさんが無関係だったり仲たがいしている人だったりした場合は、トラブルに発展する可能性もある点に注意が必要です。また、後日Aさんが遺言を破棄することで遺贈者の想いが実現されない可能性もあります。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託を利用する

遺言の作成を受遺者に依頼しなくても、「後継遺贈」と同様の効果で遺贈を行うことは可能です。

その方法が平成18年の信託法改正で有効になった「後継遺贈型の受益者連続信託」です。後継遺贈型受益者連続信託とは、「受益者の死亡により、他の者が受益権を取得することを定めた信託」のことを指します。

例えば、信託の中で「信託財産の受託者を長男Aとし、次に長男Aが亡くなった場合は残余財産を孫Cに承継させる」という内容をあらかじめ決めておくことができます。

また、「受託者」と「受益者」を別々に設定することもできます。

「受託者を長男」「受益者を妻」とすることで、「自分が亡くなったあと、妻は長男から信託財産の給付を受ける」「妻が死亡した後は信託を終了させ、残余財産を長男に承継させる」という流れで信託設定することも可能です。

受益権の承継者を数代先まで指定することで、実質的には遺贈者が財産の承継者を指定しておく「後継遺贈」と同じ効果が得られます。

後継遺贈型の受益者連続信託のメリット・デメリット

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一次受遺者以降の承継人を決めてしまえる「後継遺贈型の受益者連続信託」にはメリットと同時にデメリットも存在します。

メリット

後継遺贈型の受益者連続信託のメリットは以下の3つがあります。

1. 財産の承継人を数代先の世代まで決めておける

紹介した通り、通常の「相続」や「遺言」を利用して遺贈の財産承継者を数代先まで決めておくことはできません。「後継遺贈型の受益者連続信託であれば、数代先まで財産の承継人を信託契約の中に盛り込んでおくことが可能です。

2. 事業承継をスムーズに進めることができる

委託者が会社の経営者で、事業承継が必要な場合に当該信託は有効です。

現代では経営者の高齢化に伴い、後継者が高齢の場合も少なくありません。後継者が事業承継した直後に死亡してしまう可能性もゼロではありません。

「自社の株式を信託財産とし、受益者として後継者を順番に指定しておく」ことによって後継者候補が複数いる場合でもトラブルを回避できます。空白期間なくスムーズに事業承継が完了するでしょう。

3. 生まれていない孫を相続人に指定できる

一般的な相続では、相続時点で生まれている人しか相続人になることができません。

一方、後継遺贈型の受益者連続信託であれば、信託設定時に生まれていない子供や孫を受託者に設定することができます。

デメリット

メリットだけでなく、デメリットも確認しておきましょう。受託者は委託者の決定に長期間にわたって拘束されるため、将来のトラブルを防ぐ必要があります。

1. 30年の期間制限がある

後継遺贈型の受益者連続信託は、無限に承継人を決めておくことはできません。

信託法91条によれば「信託設定から30年を経過した時以後に、初めて受益者となった者が死亡するときまで、もしくは当該受益権が消滅するときまで」が期限とされています。つまり、「信託設定から30年が経つと受益権の承継を行えるのは1度きり」ということです。

2. 相続の都度「相続税」等のコストがかかる

受益者の死亡により受益権の承継発生するごとに、相続税の課税対象になる点にも注意が必要です。

また、受益者連続信託を設定したからと言っても、税務上のメリットは特にありません。むしろ、信託会社に一定の報酬を払うなどのコストは発生します。

3. 遺留分減殺請求の対象

後継遺贈型の受益者連続信託で承継者を指定したとしても、「遺留分侵害額請求権(法定相続人に求められた最低限の相続割合)」を超えての財産承継を行うことはできません。

まとめ

今回は、「後継遺贈の概要と有効性」と「後継遺贈型の受益者連続信託のメリット・デメリット」を紹介しました。

経営者をはじめ「承継人を自分の意志で確実に決めておきたい」という意思のある方には特に有効な方法ですが、30年という期間制限がある点などに注意しながら信託設定をする必要があります。

周囲と綿密に話し合い、全員が納得する形で信託を設定するようにしましょう。

ライター紹介 | 行政書士 橋本 玲子
行政書士事務所経営。専門は知的財産ですが、許認可から相続まであらゆる業務を行っています。また、遺言執行や任意後見関係を専門とする社団法人の理事もしています。アドバイスや業務遂行でお客様の問題が解決するととても嬉しくやりがいを感じます。行政書士ほか、宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級の資格所持。

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