【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

定年退職後の確定申告が必要なケースと不要なケース

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この記事を書いた人
高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 退職所得や失業保険の受け取りでは原則として確定申告不要
  • 年末以外に退職した場合や退職後に開業した場合は確定申告が必要
  • 医療費控除や寄附金控除を申請するときは確定申告が必要

会社に在籍している間は、所得税や住民税の計算などは会社が行ってくれるため、社員が行うことはありません。

しかし、定年退職したあとの所得に関しては自分自身で確定申告を行って国に申告・納税する必要があります。

とはいえ、必ずしも確定申告が必要なケースばかりではありません。どのような場合に確定申告が必要なのでしょうか?また、どのようなケースでは必要ないのでしょうか?

今回は定年退職後の確定申告手続きが必要なケース、不要なケースを解説します。

定年退職後に確定申告が必要なケース

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まず、定年退職後に確定申告が必要になるケースを見ていきましょう。

退職所得の受給に関する申告書が未提出

退職金は源泉分離課税であり、受け取った時に源泉徴収が行われて課税関係は終了します。基本的には確定申告は不要です。

ただし、会社から提出を求められる「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れてしまった場合は確定申告が必要になります。

退職金に係る所得税は退職金の額と勤務年数に応じて、以下の表にある「退職所得控除額」を控除したうえで残額に対して2分の1に税率がかけられることで計算されます。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

引用元:国税庁|No.2732 退職手当等に対する源泉徴収

しかし、書類を提出していない場合は退職所得控除が適用されておらず、20.42%という高い税率が適用されている状態です。確定申告を行って正しく税額を計算し、納めすぎている税金の還付が必要になります。

申告書を提出したか忘れた時に確認する場所

「退職所得の受給に関する申告書」を提出したか思い出せない場合、退職金の受け取り時にもらえる「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を確認してみましょう。

下図の赤枠に数字が入っている場合、確定申告が「行われていない」ということが分かります。

参考:国税庁|退職所得の源泉徴収票・特別徴収票

退職所得 申告書

 

画像引用:国税庁|退職所得の源泉徴収票

12月末以外に退職している

12月末日まで働いて退職した場合は会社が年末調整を行うため、確定申告は必要ありません。

しかし、12月末以外のタイミングで定年退職し、その後に再雇用・再就職で働かない場合は確定申告が必要です。

年末を迎える前に定年退職した場合、その年の給与や賞与について年末調整が行われていない概算の状態です。生命保険料控除や地震保険料控除などの各種控除が適用されていません。

年の途中まで源泉徴収で天引きされていた所得税や確定申告で控除を受けることで還付される可能性があります。

医療費控除やふるさと納税がある場合

確定申告を行うことで、各種控除を受けられる場合があります。具体的な控除の例は以下のとおりです。

  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 住宅ローン控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • ふるさと納税による寄附金控除

これらの税額控除を受ける場合、確定申告が必要です。

公的年金等の収入が400万円超の場合

現在は65歳での定年退職が一般的であり、退職後すぐに年金を受け取る人もいます。

公的年金等の収入が合計400万円以下であり、かつ、そのほかの所得が20万円以下である場合は確定申告が不要です。

一方、400万円を超える場合は確定申告が必要です。

公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以上ある場合

公的年金等に係る雑所得以外の所得(給与所得、配当所得、一時所得、公的年金以外の雑所得も対象)が20万円を超える場合、確定申告が必要です。

配当所得は株式などの有価証券を持っていることで得られる配当、一時所得は生命保険の解約返戻金や学資保険の満期学資金などが該当します。

退職後に自営業者になった場合

会社を退職して自営業者になった場合、さまざまな理由から確定申告が必要です。

  • 自営業者は確定申告が必要
  • 年末調整が行われていない

自営業者は原則として確定申告が必要です。1年間の収入や所得や税金を自分で計算し、国に申告・納税を行います。

退職後に自営業者(フリーランス)になった方は会社員の時に受け取っていた「給与所得」と自営業者になったあとに受け取る「事業所得」をそれぞれ得ていることになるため、確定申告でそれぞれの所得を合計して「総所得金額」を計算します。

また、すでに紹介した通り、12月末以外で退職して年末調整が行われていないことも確定申告が必要な理由の1つです。

たとえば初年度に赤字で白色申告を選択するケースでは、赤字の繰り越しができないため必ずしも確定申告は必要ありません。

しかし、年末調整が行われていないと会社員時代の源泉所得税を払いすぎている場合があります。

たとえば「歳の途中で扶養家族が増えた(子どもが生まれた)」というケースです。一般的に源泉所得税は前年に提出した「扶養控除申告書」の内容に基づいて計算が行われます。

参考:国税庁|給与所得と源泉徴収税額の求め方

年の途中で扶養家族が増えて会社がその事実を把握していない場合、結果として源泉徴収税を納めすぎというケースもあります。

確定申告を行うことで、働きすぎた税金の還付を受けられる可能性があるのです。

定年退職後に確定申告が不要なケース

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退職後に確定申告が必要になるケースばかりではありません。以下のようなケースでは確定申告は不要です。

  • 定年退職後の再雇用先で年末調整を行う場合
  • 失業保険で手当てを受け取る場合

定年退職後の再雇用先で年末調整を行う場合

12月末以外のタイミングで退職していたとしても、再就職している場合は新しい会社で年末調整を行います。この場合は退職した会社があっても確定申告は必要ありません。

ただし、12月までに転職したものの、新しい会社が年末調整を行うまでに前職の源泉徴収票が用意されていないと年末調整は行えません。

源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に発行されるのが一般的です。もし退職してから1ヶ月以上届かない場合、前の職場に発行されたかについて確認が必要になります。

失業保険で手当てを受け取る場合

定年退職後は、いわゆる失業保険を受け取ることが可能です。この失業保険には所得税がかからないため、受け取る金額に関係なく確定申告は必要ありません。

確定申告することのメリット

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払いすぎた税金が還付される

確定申告を行うと、納めすぎた税金があることが発覚するケースがあります。その場合は還付申告を行うことで還付金を受け取れます。

ただし、確定申告を行うことで逆に追加で税金を納めることになる場合もあります。

確定申告は税金を過不足なく納めるための手続きです。確定申告すれば必ず税金が還付されるわけではなく、源泉徴収では税金が不足している場合は追加で納税が必要です。

退職2年目の住民税にも影響する

住民税とは

住民税は都道府県に納める「道府県民税(東京都は都民税)」と市町村に納める「市町村民税」の総称です。

退職する人は会社から市区町村に「給与支払報告書」が送られ、課税額決定後に個人あてに住民税の納付書が送られます。

これによって退職後の住民税が翌年6月から普通徴収によって本人が納税することになります。

確定申告で所得控除を申請すると住民税にも影響

住民税の金額は、基礎控除や給与所得控除を差し引いた前年の所得に対して課税される「所得割額」と、前年の所得に関係なく均等に課税される「均等割額」の合計金額から算出されます。

均等割は所得に関係なく定額ですが、所得割の税率は所得に対して一律で10%です。

確定申告で何らかの控除を利用することで、所得税だけでなく住民税も安くなります。

例えば「医療費控除」では、所得税だけでなく住民税にも適用され、医療費控除額の10%(所得にかかる住民税の割合)の金額だけ住民税が安くなります。

まとめ

今回は「確定申告が必要なケース」「不要なケース」を解説しました。

退職金はすでに課税関係が終了しているほか、退職後に受け取れる失業所得は非課税です。これらの受け取りだけでは確定申告は必要ありません。一方で医療費控除やふるさと納税による寄附金控除を申請する場合には確定申告が必要です。

確定申告が必要になるケースをあらかじめ理解しておき、いざという時にはスムーズな手続きができるように準備を進めましょう。


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