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遺言は口頭でも有効?無効になる遺言の種類と対策を解説

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 口頭の遺言には法的な効力がなく、無効
  • 音声メッセージやビデオメッセージの遺言も無効
  • 遺言を有効にするには、法律で定められた「自筆証書遺言」「公正証書遺言」などを作成する

両親が年老いた場合、実家に戻ると「この家は●●に残すから」といった口約束をしてもらうことがあるかもしれません。このような口約束・口頭での遺言は、相続の場で有効なのでしょうか?

口約束以外にも、確実性が高い遺言の残し方はいくつかあります。相続する方が複数人いる場合はもめることも多く、誰もが納得する形式を選ぶことが大切です。

今回は口頭の遺言の法的効力の有無と、確実に被相続人の意志を残すために選ぶべき方法について解説します。これから相続について考えたい方は、ぜひ参考にしてください。

【結論】口頭での遺言は無効

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「私に万が一のことがあったら財産は全てあなたにあげるから」といった口約束は、相続の場面にありがちです。口約束の有効性について気になる方もいるのではないでしょうか。

結論からいってしまうと、口頭での遺言は「無効」です。

そもそも遺言は民法が定める形式に従って作成することが義務付けられています。民法960条の記載をご覧ください。

第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

引用元:e-GOV|民法

被相続人の言葉は単なる口約束にすぎないため、相続の場で遺言として有効とは認められません。

遺言は法律で方式が定まった「要式行為」だから

民法の定めによらない遺言は無効になるため、口頭で相続分の指定を行ったとしても、指定内容に有効性はありません。

これは遺言が「要式行為」であるためです。要式行為とは、法律で定められた形式で作成することが必要な行為のことです。要式行為である以上、定められた方式以外で作成してしまうと無効になってしまいます。

相続人は自由な意思で遺産分割協議が可能

口頭だけでなく、ビデオメッセージや音声による遺言も当然ながら無効です。よって、もし法律で定められた書面以外の何らかの方法で遺言が残されていたとしても相続の場では活かされません。

相続人は被相続人の指定に関係なく、自由な意思で遺産分割協議を行えます。

口頭以外でも遺言が無効になってしまうケース

ビデオメッセージ

口頭の遺言は原則として無効ですが、遺言書は正しい方式に沿っていない場合は口頭以外でも無効になってしまいます。

口頭以外に無効になるケースとしては、以下の3つが考えられます。

  1. 音声やビデオによる遺言
  2. 単独で作っていない遺言
  3. 欠陥がある遺言

音声やビデオによる遺言

民法では書面によらない形式の遺言は認められていません。たとえ本人の意志が明確であったとしても、音声やビデオメッセージで作られた遺言は無効です。

音声やビデオでは「財産目録以外の全文が自署」「署名・押印が必要」といった条件を満たすことができません。

単独で作っていない遺言

遺言は本人の意志の表れであることが担保されている必要があります。複数人が共同で1つの遺言を作成すると無効です。

欠陥(瑕疵)がある遺言

遺言の内容に不備があった場合、その遺言の効力は発生しません。たとえば自筆証書遺言で財産目録以外が本人の直筆でない場合は無効です。そのほか、以下のような場合には有効な遺言とは認められない可能性があります。

  • 作成日の日付がない
  • 書き損じが訂正されず、そのまま
  • 訂正箇所に捺印がない

また、遺言者本人の意志によらない遺言も無効です。相続人が詐欺や脅迫といった方法で作成させた遺言に有効性はありません。

「贈与」という方式であれば口頭でも有効なケースがある

贈与 印鑑

口約束は遺言としての効力を持たないのは、すでに解説したとおりです。約束の内容を実現させたい場合、生前に準備しておきましょう。

確実性が高いのはやはり「遺言書の作成」です。相続が発生すると法定相続人の「相続する権利」が守られますが、遺言書がある場合は亡くなった方の意志を尊重するために、遺言書の内容が優先されます。

遺言書以外では「死因贈与の契約」や「生前贈与」という方法を選択することで口頭での約束が実現する可能性もあります。

死因贈与

死因贈与は、生前に財産を譲る方ともらう方で同意しておく贈与契約のことです。

口約束で「財産をあげる」と被相続人が主張していた場合、贈与の意志を示したということになります。死亡を原因として贈与する「死因贈与」として認められる可能性があります。

ただ、死因贈与が認められるには以下の条件を満たすことが必要です。

  • 証人がいること、または書面が残っていること
  • 相続人全員が承諾する

単に「お父さんがこう言っていた」と本人がいうだけでなく、本人以外にもその内容を見聞きした証人がいないといけません。被相続人の贈与の意志を示せるなら家族でなくても近所の方や親戚でも証人として認められます。

証人がいない場合でも、財産を贈る方と受け取る方の捺印がされた書面が残っていれば証拠として利用できます。

ただ、相続人全員の承諾も必要です。不動産などの財産の名義変更では相続人全員の実印や印鑑証明が必要になるので、相続人全員からそれらを得られないと自分の名義に変更できません。

生前贈与

生前贈与とは、生存している個人から別の方に無償で財産を渡すことです。

亡くなる前に財産を渡すことで対象者に確実に財産を渡せるメリットがあります。父から長男に対して生前贈与を行って次男が不満を持ったとしても、父親が次男に直接対応することで不満を解消することも可能です。

相続税の課税対象になる財産を減らせるので、相続税対策として生前贈与を行う方もいます。贈与税がかからないように「暦年課税」「相続時精算課税」などの方法を使って非課税で贈与する方式が選ばれます。

生前贈与も諾成契約のため、口頭でも成立させることも可能です。実際に贈与されていなかったとしても、生前に「●●にあげる」という言葉があった場合は生前に贈与があったとみることもできるでしょう。ただ、こちらも書面を残していないと相続人全員の承認が必要な点は死因贈与と同じです。

確実に財産を残すなら口頭ではなく書面を残す

ペン ノート

財産を残してあげたい方に財産がわたるようにしたい場合、法的に有効な遺言を作成することが大切です。

ただ、どんな方式でも良いわけではありません。法的に有効な遺言には大きく分けて以下の4つの遺言があります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 秘密証書遺言
  3. 公正証書遺言
  4. 特別方式の遺言

字が書ける方が作れる遺言

自分で字が書ける方が選択できる遺言としては、以下の2つがあります。

自筆証書遺言

文字通り、遺言者が全文を自筆で書く遺言書です。財産目録を除く全てを自筆で書かないといけず、パソコンのワードソフトでの作成や誰かの代筆では作成できません。

日付・氏名の自署や押印など、細かなルールを把握していないと無効になる可能性がありますが、費用をかけずに作成できるのがメリットです。

これまで自分で保管するしかありませんでしたが、2020年からは法務局で保管してもらえるようになりました。

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秘密証書遺言

秘密証書遺言は、証人2人と公証人に遺言の存在を確認してもらいつつ、遺言の内容を秘密にしておける方法です。自筆証書遺言と違って、手書き以外にパソコンでの作成でも有効です。遺言の内容を秘密にしたい場合に利用できるほか、偽造や捏造を防げるメリットもあります。

ただ、作成に立ち会う証人2人を用意する必要があり、公証人に「自分の遺言書であること」を認めてもらう手続きも必要です。管理も自分で行うことになるため、紛失するリスクもゼロではありません。

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字が書けない方でも作成できる遺言

一方、字がかけない状態の方でも作成できる遺言としては以下の2つがあります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公正証書として公証役場で保存してもらう遺言のことを指します。自分で自筆・作成する自筆証書遺言や秘密証書遺言と違って、「公証人に内容を伝えて公証人が作成する」という方式です。すでに手が動かせない方でも、確実性の高い遺言を作ることができます。

公正証書として公証役場で保管されるので、紛失や改ざんの心配もありません。

ただ、手続きには一定の費用がかかること、公証人と証人に遺言の内容を伝える必要がある点がデメリットです。

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特別方式の遺言

公正証書遺言のほかに、特別方式の遺言も字が書けない状態の方が作成できます。特別方式の1つである一般危急時遺言は、遺言者が命の危機に瀕していて自分で遺言を用意できない緊急事態で作成できる遺言の方式です。

3人の証人のうち1人に口授で遺言の内容を伝えて証人の1人が筆記をし、筆記した証人が遺言者と証人に内容を読み聞かせ、正確性が確認されたら証人が署名と捺印を行います。家庭裁判所の確認を経れば完成です。

ただし、死期が迫った遺言者しか選択できません。元気になってから半年が経過すると無効になる点に注意が必要です。

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まとめ

今回は口頭の遺言の法的効力の有無と、確実に被相続人の意志を残すために選ぶべき方法について解説しました。

原則として、書面によらない口頭での遺言は無効です。「死因贈与」などの方法もありますが、相続人全員の承諾が必要など高いハードルがあり、実現できない可能性もあります。

自筆証書遺言や公正証書遺言など、法的に認められた遺言を作成して自分の意志を伝えるほうが確実です。


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