- 介護の3kは「きつい」「汚い」「危険」のこと
- 給与が低いことも含めて4kとする場合も
- 必ずしも実態に沿った言葉ではなく、一般的なイメージにすぎない
介護業界の仕事に対して「大変で入職しても辞める人が多い仕事」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。実際、インターネット上では介護の仕事について「3kだ」という意見も見られます。
介護業界における「3k」とは、何を指す言葉なのでしょうか。また、その言葉は介護業界の実態を正しくとらえた言葉なのでしょうか。
今回は介護業界における「3k」の意味と、本当に3kといえるのかの実態について解説します。
目次
介護職における3kとは
介護業界は「3kである」といわれることがあります。3kは、以下の3つを指した造語のことです。
- きつい
- 汚い
- 危険
それぞれの頭文字がkであることから3kと呼ばれており、職業のイメージを表す造語として広く使われています。介護業界だけでなく、清掃・建築・土木など、肉体労働が主になる仕事は3kと評価される傾向にあります。
介護における3kは、どのような意味合いがあるのでしょうか。
きつい
「きつい」は、介護職が体力仕事であることを表しています。
老齢に達していても体格のいい男性は体重が重いことも多く、持ち上げて移動することは体力が求められます。介助の姿勢で利用者の目線までしゃがむことで、足腰に負担がかかることもあるでしょう。
車椅子に乗せる際にも腰に負担がかかりやすいため、腰痛につながる可能性もあります。
【経験済み】三交代は合わない人は全く合わない
介護の肉体的な辛さは、三交代である事にも関係しています。
24時間の介護が行われる職場では3交代の勤務シフトになることで、体力が奪われやすいのです。
介護職ではありませんが、筆者も1年ほど3交代の職場を経験しました。
3交代の大変さは人によって異なりますが、筆者の場合は全く身体に合いませんでした。夜勤明けの明るい時間にどうしても睡眠をとれず、全く眠れない日々が続きました。
年中無休の職場のためにシフトに生活リズムを依存することになり、単発の休みが多いことで体力の回復もままなりません。
医師に「三交代は向かない」といわれて止む無く職場を後にしました。
生活リズムの崩れによるダメージが徐々に蓄積することは実体験として理解しています。
汚い
介護業界では入居者のおむつ交換やトイレの付き添い、おむつ交換といった「排泄」と関わる業務が非常に多いのが特徴です。
実際、どれだけ気を付けていても排泄物のにおいは介護職なら避けては通れないでしょう。排泄以外にも、よだれや食べこぼしなどの掃除も仕事のうえでは日常茶飯事です。
他人の排泄物に嫌悪感をもつのは、人間の感情としては当然です。この点が「汚い」とされる要因になっています。
危険
介護では介助する側にとっては危険が伴う場合もあります。
例えば狭い施設のなかを介助しながら歩いていて入居者がよろけた時、一緒に転倒してケガをしてしまう可能性もあります。
入居者は年齢的に若い世代よりも免疫力が弱まっていることで、感染症による集団感染が起こりやすいこともあります。
たとえば神奈川県が公表した新型コロナウイルスのクラスター感染の発生状況を見ると、計69件の未終結クラスターのうち14件は「介護・福祉施設」で発生しています。学校・大学・企業などを押さえてもっともクラスターが発生している事業所ということになります。
参考 クラスターの状況と県の対策について神奈川県4つ目のkとして「給与が低い」という意見もある
3k以外にも、4つ目のkとして「給料が安い」が加わって「4k」といわれることもあります。
介護というと「低年収」というイメージが先行していますが、本当に介護業界の年収は低いのでしょうか。
介護業界への転職を紹介している「介護求人ナビ」によると、職種ごとの平均年収は以下のとおりです。
直接雇用の年収 | 派遣の年収 | |
介護職・訪問介護員 | 328万円 | 305万円 |
ケアマネージャー | 390万円 | – |
生活相談員・営業関係職 | 294万円 | – |
施設長などの管理職 | 399万円 | – |
サービス提供責任者 | 350万円 | – |
一方、国税庁の民間給与実態統計調査結果の概要によると、日本人の給与所得者全体の平均給与は436万円です。
参考 民間給与実態統計調査国税庁この結果を比較すると、現状では介護業界の平均年収は全体の平均よりは低いといえることになります。
見方を変えた「新3k」の考え方もある
3kという言葉はマイナスなイメージが強く、広まると新規入職の希望者を減らすことにつながります。そして、必ずしも介護全体の実態を反映してはいません。
現在では介護する側の労働環境の改善が少しずつ始まっています。たとえば2019年4月から施行された働き方改革では残業時間に上限が設けられ、有給休暇の取得が義務化されています。
汚いに代表されるイメージを払拭するかのように、清潔な見た目を整えた介護施設も登場しています。新しい施設ではトイレやお風呂が広く、介護する側にとっても「汚い」というイメージとは結び付きにくくなっています。
こうした改善策の充実もあり、介護業界のイメージをもっと良くするための「新3k」という言葉が出現してきています。
定義はさまざまですが、「感謝」「感動」「感激」や、「かっこいい」「クリエイティブ」「稼げる」といった表現の仕方があるようです。
介護業界では介護技術を高めるためにキャリアアップに励む人も多くいます。そうした前向きな人たちにとっては、介護業界は3kでも何でもないのです。
前向きな3kが広まれば、介護業界に対する世間のイメージも変わるかもしれません。
イメージだけで判断せず、事実を知ることが大切
介護業界の仕事は確かに簡単ではありません。
とはいえ、現在は国も対策に乗り出し始めています。従来のイメージだけに左右されず、実際の待遇について具体的に調べてみることが大切です。
国の介護職員処遇改善に期待できる
2019年の働き方改革によって、残業時間に上限が定められました。有給休暇の取得も義務となったため、忙しくて休めないと言われた介護業界も休める環境が整いつつあります。
法改正では時間外労働(休日労働は除く)の上限が原則として月45時間・年360時間に定められ、特別な事情がない限りは超えることはできません。
特別な事情があったとしても、時間外労働は年720時間以内までが限界です。
参考 時間外労働の上限規制厚生労働省併せて年5日の年次有給休暇の確実な取得も、使用者の義務として定められています。
参考 年5日の年次有給休暇の確実な取得厚生労働省さらに、国では介護人材を増やすために「特定処遇改善加算」を2019年10月1日から新設しています。
「経験・技能のある介護職人」のうち1人以上は、月額8万円の賃上げ又は年収440万円までの賃金増が必要とされています。
参考 2019年度介護報酬改定について厚生労働省老健局少子高齢化が進むほど、介護職員の需要は増えます。なり手が少ない現状では、今後もさらなる処遇改善の可能性もあるでしょう。
今後は必ずしも「介護=低賃金」とは言えなくなるかもしれません。
正しい知識があれば体力に自信がなくてもできる
介護が「きつい」と感じる人のなかには、正しい介助の方法を習得していないケースもあります。人間の体重は40kg以上もあり、力任せに持ち上げるのは不可能です。身体の負担を軽減する介護方法の習得が必要不可欠になっています。
たとえば介護初心者向けの資格である「初任者研修(旧ヘルパー2級)」。資格の学習を通じて介護の技術・知識を習得できれば、肉体的な負担は軽減できます。
ただし、筆者のように夜勤が絶対に身体に合わない人もいるでしょう。
夜勤が体質に合わない場合は職場に相談して夜勤の頻度を減らすことも考えましょう。あるいはデイサービスなど、夜勤がない職場を探すことでも負担を減らすことは可能です。
離職率は他業種と比べて高くない
介護労働安定センターの「令和元年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査」によれば、訪問介護員、サービス提供責任者、介護職員3職種の離職率の平均は15.3%でした。
参考 令和元年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査介護労働安定センター厚生労働省の2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況によると、全体の離職率は15.6%です。全業態の平均と比較すると、介護の離職率は決して高いわけではありません。
参考 2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況厚生労働省3kという言葉が流行していると、入職した人が大量に辞めてしまうイメージを抱きがちです。もちろん個々の事業所ごとに離職率は異なりますが、データを比較してみると必ずしも離職率が高いわけではないのです。
まとめ
今回は介護業界における「3k」の意味と、本当に3kといえるのかの実態について解説しました。
3kは「きつい」「汚い」「危険」の頭文字からとった言葉ですが、必ずしも介護の現状を正しくとらえた言葉ではありません。働き方改革の導入や清潔な介護施設の導入によって、労働環境は改善が試みられています。
これから介護業界を目指す方は単なるイメージにとらわれず、職場ごとの実態を個別に把握していきましょう。

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