- 自治体ごとに介護者を支援する「介護手当」が存在する
- 制度の名称・内容は地区町村単位で異なる
- 受取には申請が必要
要介護に認定された家族を支援する場合、精神的・体力的な負担はもちろんのこと、金銭的にも大きな負担になります。
そこで検討したいのが、自治体ごとに制度が確立されている「介護手当(家族介護慰労金)」です。制度名は自治体ごとに異なりますが、条件を満たせば年間10万円といったまとまったお金を得ることも可能です。
今回は自治体ごとに制度が異なる「介護手当(家族介護慰労金)」の全体像について解説します。
目次
介護手当(家族介護慰労金)とは
介護状態である親を介護するなど一定の条件を満たした場合、市区町村から「介護手当」を受け取ることができる制度です。
介護保険をはじめとして医療費の自己負担が軽減される制度には注目が集まる一方、市区町村から手当が支給されることはご存知ない方も多いのではないでしょうか?
介護手当は、介護によって家庭の経済状況が悪化するのを防ぐために作られた制度です。家庭の経済状態が悪化した場合は要介護者や家族に影響を及ぼしますが、介護手当を受け取ることでそのような状態になるのを防ぐことができます。
自治体によって呼び名はさまざま
介護手当という呼び名はあくまでも総称であり、自治体によって呼び名が変わることもあります。
たとえば東京都の江戸川区では「熟年者激励手当」、新宿区であれば「家族介護慰労金」といった具合です。
「介護手当」「家族介護慰労金」という名称で市区町村の公式ホームページを探してみて見つからなかったとしても、「うちの市区町村は制度がないのか……」と諦めてはいけません。
市役所の介護保険課に電話し、類似するような制度がないのかは確認してみましょう。
市区町村独自の制度のため支給要件はさまざま
介護手当の基本的な条件は以下のとおりです。
- 要介護4または5の認定を受けている人を介護している
- 要介護者と同居をしている
- 世帯が非課税である
- 制度を利用する市(区)に在住していること
- 自宅で介護をしていること など
ただし、同じ介護手当でも条件が異なる場合がある点に注意が必要です。介護手当は市区町村が実施していますが、市区町村の財政的な体力は全く異なります。
なお、要介護4か5でないと支給を受けられないわけではありません。市区町村独自制度のため支給条件は変わってきますが、要介護3から支給など要介護度の要件が緩い自治体も存在します。
また給付額も異なる場合があります。一般的には年間で10万円程度ですが、市区町村によっては「月額3万円」といったように、さらに大きな金額を受け取れるケースもあるのです。
受け取った手当の使い道は自由
介護手当という名称ではありますが、必ずしも介護のために利用しなければいけないということはありません。
基本的に使い道は自由で、使ったあとにレシートを残しておく必要もありません。ケースワーカーなどへの報告も不要です。
介護用品だけでなく日用品や食材の購入などに幅広く使えるため、介護によって金銭的に不自由している家庭には嬉しい制度でしょう。
原爆被害者向けの介護手当もある
介護手当・家族介護手当という名称で原爆被害者向けの制度も存在します。市区町村で取り扱いがあるのは広島市や長崎市です。
介護手当は、被爆者が原子爆弾の傷害作用の影響による精神上または身体上の障害(身体障害者手帳の1級から3級に該当する程度の障害により、費用を支出して身のまわりの世話をする人を雇ったときに支給されます。
支給額は重度障害がある人で月額105,560円以内・中度障害がある場合で70,360円以内であり、手続きに被爆者健康手帳が必要など、今回紹介する介護手当とは別の制度です。
長崎市の場合は「介護者慰労金支給」、広島市では「家族介護慰労金」という名称で、今回紹介する要介護4または5の方を介護している人向けの制度も存在します。
給付を受けるには申請が必要
介護手当の条件を満たしていても、市民からの申請がないと支給されることはありません。自動的に支給されない点には注意が必要です。
申請のタイミングは特に決まっていませんが、要介護の認定を受けてから1年以上を経過すればいつでも申請できます。
申請の方法自体はどの自治体でも大きく変わることはありません。今回は大阪市の公式webサイトで紹介されている申請の流れを紹介します。
- 「大阪市福祉局 高齢者施策部 地域包括ケア推進課」まで問い合わせ
- 福祉局から申請書類が送付される
- 必要事項を記入して福祉局に返送
- 申請内容および支給要件の審査・支給の決定
- 支給決定通知書および請求書を送付
- 請求書に必要事項を記入して返送
- 指定の金融機関口座に家族介護慰労金が入金
主な自治体の介護手当の内容を紹介
介護手当は全国の自治体によって制度の名称も内容もバラバラです。
全てを網羅することはできませんが、今回は東京・名古屋・大阪をはじめ、一部の市区町村を抜粋して紹介します。
新宿区
名称:家族介護慰労金
対象:在宅の高齢者を介護している家族で、次の全てに該当する方。
- 高齢者が介護保険上の要介護者であり、1年を通じて要介護4または5と認定されている
- 高齢者が要介護認定後、1年間にわたって介護保険のサービスを利用していない
- 高齢者、介護者共に住民税の非課税世帯である
- 高齢者と介護者が同居、または事実上同居に近い形で介護をしている
支給額:年間10万円
新宿区の介護手当は平均的な支給条件・支給額になっています。
江戸川区
名称:熟年者激励手当
対象:以下の条件を全て満たす方
- 60歳以上で江戸川区に在住していること
- 介護保険の要介護認定4または5で在宅介護をしている
- 本人及び本人と住民票上の世帯を一にしており、かつ世帯全員が住民税非課税
ただし、以下に該当する場合は上記の条件を満たしていても申請できません。
- 申請日が病院の入院日から退院日の間に入っている
- 申請日が介護保険施設等の入所日から退所日の間に入っている(ショートステイ、お泊りデイも含む)
- 重度心身障害者手当の受給者、または生活保護の受給者
- 世帯内に住民税未申告者がいるとき(本人を含む)
支給額:月額15,000円×在宅月数
江戸川区では支給額が月額計算になっているのが大きな特徴です。在宅介護の月数次第では、ほかの市区町村よりも多く受け取れる可能性があります。
久留米市
名称:家族介護慰労金
対象:次の条件を全て満たす方
- 被介護者が「要介護4」「要介護5」の認定を受けていること
- 被介護者、介護者とも久留米市に住民票があること。同居または同居に準ずる状態で介護していること
- 被介護者、介護者ともに介護保険料を滞納していない
- 上記1に該当する被介護者を1年以上、在宅で介護していたこと
- 支給対象期間において、介護サービスをほとんど利用していないこと(住宅改修、福祉用具の貸与、年間10日以内の介護サービスの利用は支給の対象となります。)
- 介護者は生活保護を受給していないこと
支給額:年間12万円が上限
久留米市では住宅改修や福祉用具の介護、年間10日以内の介護サービスの利用であれば支給対象に含まれます。
また、支給額は年間12万円が上限と、ほかの市区町村よりも高くなっています。
名古屋市
名称:家屋介護慰労金
対象:次のすべての要件を満たす高齢者の方を現に介護している同居の親族
- 介護保険の要介護認定で要介護4、または5と認定されていること
※慰労金の支給申請の1年以上前に認定を受けていることが必要 - 介護者及び被介護者ともに、世帯員の全員が市町村民の税非課税世帯である
- 過去1年間に介護保険サービスなど(年間7日以内のショートステイの利用は除く)を受けずに在宅で過ごしたこと
※おおむね3ヵ月以上の長期入院の期間がある場合は、その前後の期間を合算して1年間以上サービスを受けていないこと
支給額:年間10万円
名古屋市では「過去1年間に介護サービスを受けていないこと」という条件はほかの市区町村と変わりませんが、3ヶ月以上の長期入院期間がある場合は前後を合算できます。
八戸市
名称:介護者慰労金
対象: 65歳以上の、寝たきりや認知症などで介護の必要な高齢者を、引き続き1年以上在宅で介護している人
- 介護を受けている人と同居しており、かつ生計を同じくしていること
- 1年以上にわたって八戸市に居住していること
(注意)申請にあたっては、民生委員の確認が必要です。
支給額:対象者1人あたり年額3万円
八戸市の場合、申請にあたって民生委員の確認を求められます。また、年間の支給額が3万円であることもほかの市区町村と異なります。
広島市
名称:家族介護慰労金
対象:次のいずれにも該当する方を、在宅で、主として介護している家族の方
- 市民税の非課税世帯に属している
- 1年間継続して、介護保険の要介護4・5と認定されている。または、4・5相当と認められる方(要介護認定を受けていない方は、要介護4・5に相当するかどうかの調査を最初に受けておく)
- 1年間継続して介護保険のサービスを利用していない方(ただし、7日以内のショートステイ利用を除く。)
- 1年間継続して、病院等の医療機関への入院または社会福祉施設等への入所の期間が、通算してこの判定該当期間の2分の1を超えない方
支給額:10万円
広島市は原爆被害者のための「介護手当」も存在するため注意が必要です。
制度の基本的な骨子はほかの市区町村と変わりませんが、「社会福祉施設等への入所期間」についての条件が付されています。
まとめ
今回は市区町村から受け取れる「介護手当(家族介護慰労金)」について解説しました。
介護に関する制度といえば要介護度・要支援度に応じて自己負担が1割になる介護保険が有名ですが、条件を満たせば介護手当を通じて自治体から現金を受け取ることもできます。
自身が住んでいる自治体に同様の制度があるか、まずは確認してみましょう。

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